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 遍路はお心、服装に決まりはありません。なるほど現代のお遍路さんはジーンズにスニーカー、帽子にサックと実に様々!とはいえ白衣まとうだけで、地元の方や、お遍路さん同士の交流がぐっとスムーズになり、気持ちもうんと引き締まります。杖と白衣だけでもいいのです。是非、遍路支度をそろえてみて下さい。



お遍路さん用具
 一般的に装備される遍路用具です。すべてそろえる決まりはありません。

◆ 基本的な装備



■菅笠(すげがさ)
遍路の装具。日除け、雨帽。

■金剛杖
杖には弘法大師が宿るといわれています。
頭部の五輪は直接手で触れない様、金襴で巻きます。
橋の上では杖をつかない約束。

■白衣(びゃくえ・はくえ)
遍路の装具。道中衣と判衣があり、普通、着られるのが道中衣。判衣は納経帳と同じように御宝印をいただくもので、一般的には着ない。

■半袈裟・輪袈裟
遍路の装具。
仏事・巡礼の際の略礼服で肩からかける。お手洗いや食事の際は、必ず取りはずす。

■念珠
参拝の際、手を合わす際にかける。(詳しくは下記参照)
お手洗いや食事の際は取りはす。

■納札(おさめふだ・のうさつ)
各札所の本堂、大師堂の納札箱に納めます。
接待を受けた際、差し上げるのが礼儀。名刺代わりとしても使用される。

■納経帳
納経の証として、各札所の納経所にて黒書・ご朱印をいただく。
納経帳の他に納経軸や判衣も同様に使われる。(詳しくは下記参照)

■経本
四国霊場専用の経本。般若心経・御本尊真言・光明真言等が書かれています。
暗記していても経本を見ながら読経するのが慣わし。

■ろうそく・線香
参拝の際使用。
奥から立てるのが礼儀。

■御影帳
納経した際に頂く御影(お寺の御本尊のお札)をファイリングするもの。御影をきれいに残しておきたい方むけ。

■持鈴
読経の際、各節ごとに振る。
上級者向き。(詳しくは下記参照)

■札挟・巡拝パック
納札を収納する。大きいバックにはろうそく・線香なども収納できる。




◆ 装備例 と お遍路用品リスト





お遍路用品リスト
 法具 : 金剛杖 : 600円 〜 
 : 金襴 :300円 〜 
 : 念珠 :600円 〜 
 : 経本 :600円 〜 
 : 納札 :600円 〜 
 : 納経帳 :2000円 〜 
 : 御影帳 :600円 〜 
 : 持鈴 :600円 〜 
 装具 : 白衣 :2300円 〜 
 : 菅笠 :300円 〜 
 : 半袈裟 :600円 〜 
 その他 : 札挟 : 600円 〜 
 : ろうそく :300円 〜 
 : 線香 :600円 〜 
…価格は最低限の目安です





遍路用具の基礎知識


金剛杖
 杖には弘法大師が宿るといわれています。遍路の精神は同行二人(お大師さまと二人連れ)。是非、お大師さまの分身となる金剛杖と共に旅路を歩いてみて下さい。頭部の五輪部は俗身にふれないよう白布や金襴で巻きます。宿に着いたら先の汚れを落とし、上座に立てかけ、その前でご法楽をあげる。又、橋の上では杖をつかないのが約束で、これは弘法大師が十夜ヶ橋の下で宿をとったのが由来。
Memo : 杖の種類として多く使われているのが五輪四角杖で、頭部の五輪(地水火風空)部分は大日如来の三昧耶形(さまやぎょう;仏のシンボル。誓いや教えを、物の形で示したもの)、つまりお姿でもあるので、この部分は俗身にふれないよう白布や金襴で巻きます。四方に書かれた梵字(ぼんじ)は四方門と同時に四国道場を表しています。梵字の下には(ユ)南無大師遍照金剛と書き、その右横に同行二人と書きます。




白衣(びゃくえ・はくえ)・笈摺(負摺:おいづる・おいずり)
 これを着るとひと目で遍路とわかります。道中衣と判衣があり、一般的に着られるのが道中衣で、判衣は着ずに納経帳と同様に御宝印をいただき、死出の衣装とされます。ご自身で用意される場合、白衣背中に(ユ:弘法大師の種子)南無大師遍照金剛と黒書し、その横に小文字で同行二人と書きます。さらに笈摺の背に年月日・住所・氏名などを書きますが、最近では省略されることが多いようです。
 笈摺はもともと笈(宗教具を入れる箱)から白衣を汚さないようにするものが由来で着用されていましたが、最近では着ないことが多いようです。

<判衣>


<笈摺>
Memo : 遍路の衣装が白づくめであるのにはいくつかの由来があります。遍路の元となる修行がもともと死出の修行であったことや、昔は整備された道もなく巡礼は大変なものであり、病を持つものや老人なども多かった、そういったことから巡礼中に行き倒れる人も多く。そこで人々はいつどこで死んでもいいように常に白装束を装ったということです。
 又、西国巡拝では観世音を背負って巡礼していた為、これに俗身がふれないように白衣を着ていたことに由来したとの考えもあります。




 ◆ 菅笠(萱笠・網代笠・遍路笠)
 日除けや雨具として大いに役立ちます。とはいえ、やはり荷になるので最近では帽子にとって代わられている感も。四方に迷故三界城(東北)・悟故十方空(東南)・本来無東西(南西)・何処有南北(西北)。さらに四句の行間に同行二人(北か西)・その反対側に(ユ)梵字(南か東)と書かれる。
Memo : 菅笠の四句の訳せば、”迷うゆえに三界の城があり・悟るゆえに十方は空なり・本来、東西は無く・何処にか南北あり”となります。「三界」は輪廻の世界を現し、悟りを得なければ逃れられないのがこの三界。苦労が絶えないという意で使われることもあります。又、「十方」は全ての空間を表し、すべてが集まり、すべてが発する場所ともされます。
 この句は様々に解釈されますが、答えはそれぞれの遍路の中にあるのでしょうか。




 ◆ 輪袈裟(わげさ)・半袈裟(はんげさ)・折五条(おりごじょう)
 もともと出家者が着用する袈裟ですが、そして、その略式の法衣としても使われるのが半袈裟や輪袈裟、折五条です。近年、遍路の法衣として着装されています。出家在家・宗派関係なく様いてよいようです。
 袈裟を外するときには下に直接置かず、上座や机の上に置き、お手洗いや食事の際は、必ず取りはずす。
Memo : お坊さんのよく着ている袈裟。これが省略されたものがこの輪袈裟です。袈裟は元々、釈迦が考え出した仏弟子の制服で、年月・国々経て様々に変遷していきました。袈裟は本来、三賎(体賎…ボロきれであること。色賎…濁った色・壊色であること。刀賎…布を細かくして、継ぎ合わせること)が厳守されました。袈裟は古代インド語”Kasaya”が変異したもの。Kasaya(カシャーヤ)→迦羅沙曳→加沙→袈裟。”Kasaya”は濁色(だくしょく)」の色の意。




 ◆ 納札(おさめふだ)
 各札所の本堂、大師堂の2ヶ所の納札箱にお札を納めます。札にはあらかじめ名前と住所を記入しておきますが、最近では詳しい住所・氏名は控える方も。色は巡礼〜4回まで白札・〜7回まで青(緑)札・〜24回まで赤札・〜49回まで銀札・〜99回まで金札・100回以上錦札となっています。接待を受けたときには、お札を差し上げることとされています。
Memo : お札を納めることを「札を打つ」を言う。これは昔、お札が木製や金属製で、修行者が巡礼所の壁や柱にこの札を打ち付けていたなごりです。札打は”碑伝”を由来とする名乗りの慣習と考えられています。この慣習は自分が参拝した証を残すためのもので、これを多く残すことが功徳だとも考えられていました。本来は木柱を立てたり、木製や銅製の札を打ち付けたりしていたのですが、現在は建物の保護のために紙の札をおさめるという形をとっています。そして、これが今も納札という形で受け継がれています。
 納札の色に特に決まりはありません。回数にかかわらず、ずっと白札で通す方もいらっしゃいます。




 ◆ 納経帳(のうきょうちょう)
 各札所の”納経”の証として、黒書・朱印をいただきます。納経軸や判衣も同様です。”納経”は近年、読経(お経を読んで納める)のほか、写経(お経を書き写したもの)を納める方法でもよい。
 各札所で礼拝、納経の後、納経所にて黒書・朱印をいただく。印をいただく際は納経帳は開いて差し出すのが礼儀。
<納経軸>
Memo : もともとは社寺へ写経を納めたことを証明する「納経請取状」が由来となったと考えられています。社寺を巡って得られたこの請取状は、行者の徳を表すものとなり、その人にとっての箔となりました。




 ◆ 経本
 納経の際、読経します。四国霊場専用の経本があり便利です。般若心経・御本尊真言・光明真言等が書かれています。暗記していても経本を見ながら読経することとされています。

Memo : 教本は真言宗のものが基本となっています。四国霊場専用の経本には、開経偈・懺悔文・三帰・三竟・十善戒・発菩提心真言・三摩耶戒真言・心経奉讃文・般若心経・舎利禮・十三佛真言・光明真言・大金剛輪陀羅尼・回向文・八十八ヶ所御本尊御真言・八十八ヶ所御本尊御詠歌等が入っています。




 ◆ 金剛鈴・持鈴(じれい)・五鈷鈴(ごこれい)
 以前、遍路の鈴は金剛鈴の中の1つ、頭部が五鈷杵の五鈷鈴が使われてたようです。最近では持鈴が多く使われています。鈴の音には、行者の煩悩を払い、心を軽安に導くとのこと。読経の際、節を合わせて振られます。





 ◆ 念珠・数珠
 お遍路では一般的に真言宗用の数珠が多く使われています。菩提寺のある方はそちらから頂いたものを用いても結構です。宗派はその方のものでよいです。お手洗いや食事の際は取りはずしてください。
Memo : 真言宗では数珠のことを念珠と呼びます。珠の基本的な合わせ方は、真言宗の場合、両方の手の中指にお念珠をかけ、そのまま手を合わせ三度擦ります。
 真言宗の念珠の形は主に、親玉から七顆目、二一顆目に四天があり、菊房です。お店では宗派別に買えます。